子は親を映す鏡 その1

「お友だちにそんな言い方しちゃダメ。」

お母様、あなたの口調そっくりではありませんでしたか。

「弱い者いじめはいけません。」

あなたは、どんな人に対してもやさしく接することができますか。

「みんなと仲良くね。」

あなたは「我が子さえ良ければいい」の姿勢で、子どもを育ててはいませんか。

「先生がおっしゃったお約束事は守らなきゃ。」

あなたは、人目につかない場所でも公衆道徳を守っていますか。

「もっといつもニコニコしたら?」

あなたに笑顔がありますか。

良い意味でも悪い意味でも、子は親を映す鏡です。
行動観察後の評価は、子どもだけのためにあるのではありません。
評価を見て、子どもを怒る前に、我が身を振り返ってみて下さい。
親の意識を変えなければ、子どもの行動をよくすることはできません。

なぜ、小学校入試に親の面接があるのか?
親が良ければ、子どもも良いから。

親の面接をしないで行動観察を重視するのは?
子どもを見れば、どんな親かわかるから。

概して、面接重視の学校よりも、行動観察重視の学校の方が、良識のある家庭の子どもが合格しています。
親はとりつくろうことをしますが、子どもは正直なので、
そこから透けて見える家庭のありようを正確に観察することができるからです。

成蹊の入試で、魚釣りの行動観察が出題された時のことです。
釣り糸が長いので、すぐに他の子の釣り糸と絡まります。

「やめてよ。」

当然不合格。人が悪いわけではありません。

力まかせに釣りざおを引っ張る。

釣り糸が取れたりするだけで、問題の解決にはなりません。

ここでとったひろお君(仮名)の行動です。

「一匹は釣りましょうね。」

と言われたのに、黙々と釣り糸のからみをほどいていて、一匹も釣れなかったのです。でも合格!

結局桐朋小に進学したひろお君は、その行動が示す通りの子どもでした。
もちろん、知的能力、運動能力、創造力、手先の巧緻性すべてに優れていましたが、
思いやりのある行動をとることと状況判断をすることにかけては、彼の右に出る子どもはいませんでした。

年中の夏期講習の時のことです。初めてやって来た子どもが泣いていました。
彼はその子に、おどけた表情をしてみせたのです。
授業後、私に
「先生、ぼくが面白い顔をしたら、やすと君(仮名)笑ったよ。」
なんと子どもらしく、やさしい行為でしょう。
それはまさに、お母様の姿勢なのです。

「人に迷惑をかけてはいけない。」

「人の立場に立って行動する。」

このようなことを願書の家庭の教育方針の欄に書く方は多いのですが、
事実かな? と疑問に感じるケースも多々あります。
ひろお君のお母様はその言葉通りの姿勢で、教育していらっしゃいました。

「授業が終わった後、子どもたちがボールやフープなどで遊びますが、いいんでしょうか。」

教室の備品を勝手に使って遊ぶことに対して疑問を持ち、
ひろお君には使わないように言い聞かせてあったのです。

「授業の緊張の後、楽しく発散しているのですから、けっこうですよ。」

その後は、ひろお君も遊びに加わるようになりましたが、最後まできちんと後片付けをするのも彼でした。

お母様、真の意味での名教師になって下さい。
家庭におけるペーパートレーニングの師であるだけでなく、行動の師に。
小さな心がけの積み重ねで、子どもの行動をよりよくすることができるのです。
次号で、そのための親のチェックポイントを述べたいと思います。

どうか、いつも「子は親を映す鏡である。」ことを心の片隅にとめておいて下さいね。

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