昨年の受験を振り返って ?大野所長と各担当講師の座談会 早稲田実業学校初等部編

昨年の受験を振り返って ?大野所長と各担当講師の座談会 早稲田実業学校初等部編

大野: 11年度は18名(1次23名)が合格。これまでにない実績でした。
神田(早稲田クラス担当): 早実の試験は、入学後スムーズに学校生活が送れる子を選ぶものです。そのため、総合力のあるお子様が多かったことが実績の理由でしょう。不器用ながらも、実直に取り組んだお子様が合格しました。一生懸命課題に向かって取り組め、子どもらしさも持った子どもが求められているようです。
大野:早実に入るにはコネクションが必要だとの噂がありますが。
神田:まったく関係ないと思います。試験では子どもだけを見ています。
大野:同感です。合格されたお子様はみなさん、なるほどと納得できる子たちでした。学力があり、生活力が旺盛で、友達と仲良く遊べ、困ったときでも対応できるお子様たちでした。
神田:ペーパーに関しては、復習をよくなさったお子様が1次を合格されました。

指示を聞くことが大事

神田:ペーパー試験の問題は、試験日と時間帯で異なり、計9種類あったようです。月齢によって少し難易の差がありました。単純に数を数えるような問題はありません。マジックボックスの問題は、口頭での指示を聞いて答えを出す形式です。例は示してもらえません。いずれにしても、指示を聞くことと、思考力が求められます。話の記憶はかなりの長文でしたが、メリーよりも短かった、メリーの方が難しかったいう子もいました。やはり800?900字の長文には慣れておく必要がありますね。
大野:難しい問題をやっていると、本番でも対応できますからね。
神田:運動については、運動能力そのものではなく、基本的動作が行えるかどうかを見る課題が、ここ数年出されています。後ろ向き歩き、ケンケンなど、体操教室に行かなくてもできるような動作ですが、ここでも指示を聞けるかどうかがポイントです。さらに模倣行動だったら、大きく動作して子どもらしくするという点が大切で、運動能力より感性や態度を見ているようです。ただし、入学後スムーズに学校生活が送れるかどうかという観点から、あまりに日常動作でもたつくようではだめですね。

自立心を育てる

神尾(巧緻性クラス担当): 巧緻性についても、ご家庭で復習をきちんとなさったお子様が合格されたという印象です。また日常生活で、子どもができることは、できるまで待つというご家庭のお子様が多かったと思います。
大野:自分の力でこなす力を育てるために、口出し、手出しをし過ぎないことですね。ペーパーができる子でも、自立心のない子は合格されていません。
神尾:その通りで、自分でここはどうだろう、こうしたらもっとうまくいくかなと考えるお子様が合格されています。
大野:課題がすべてこなせなくても、様子をよく見ていた子は1次を通過されていますね。ですから、結果だけでなく、子どもそのものを見ているのが、早実の入試と言えます。

自分の意見を持つ

細原(行動観察クラス担当):行動観察に関しては、初等部創立初期にはリーダーシップを特に重視していたそうです。近年はリーダーシップをとれる子以外に、発言がなくてもまとめられる子、楽しむときは楽しむメリハリのある子、また、おとなしくても自分の意見をしっかりと持った子が合格しているのではないでしょうか。私の息子も初等部におります。息子がある日、翌日に台風が東京を直撃するというニュースを目にした後、たまたま校長先生にお会いしたことがありました。先生に、明日の授業はどうなりますかと尋ねましたら、逆に「君はどうした方がよいと思う?」と聞かれました。息子は「危険なので休みにしたらどうですか」と提案したところ、先生は「わかりました。先生方と相談して決めます」と言われ、そのとおり休校になりました。このことでも、早実がいかに個人を尊重する学校かがおわかりになると思います。行動観察の授業では、きちんと意見を持ち、それを発言できるように教えています。またご家庭でもそのように心掛けていただきたいと思います。
大野:同じレベルの人間として扱っていただくと、感激しますね。
細原:息子は単純に休みを喜んでいたようですけど(笑)。
早実には活発な子だけでなく、おとなしい子もいますが、全体的に外で遊ぶのが大好きな子が多いと思います。だから、ある程度、運動能力もあるとよいですね。ただペーパーができる、リーダーシップがあるのがよいのではなく、バランスがとれたお子様がよいでしょう。
大野:面接についても、同じことを感じます。質問に答えると、さらに突っ込んで質問されます。なんとか言葉にできる能力、どんな場面でも自分の力で解決できる能力を見ているのでしょう。
細原:面接では子どもの名前ではなく、「君は」と問いかけられました。そこに子どもを一個人として見る姿勢を感じました。答えにつまっても、待ってくださいます。そのとき泣き出さずに、きちんと自分の気持ちを言葉で表せること大事です。
神田:面接で泣いてしまって、残念な結果になったお子様もおられました。願書に書いた内容について、かなり突っ込んだ質問があったからです。
細原:願書の内容はしっかり見られているようです。面接では願書に基づいて、次々と質問されます。家族でしっかりと話し合っておく必要があります。

最後までがんばる

大野:絵画工作ではこれまで、生活体験に基づく題材がほとんどでしたが、今回は違っていましたね。
河本(絵画工作クラス担当):発想力を問うものが入りました。発想力を問う課題は以前にもありましたが、やはり基礎絵画ができていないと対応できません。また、自分の頭で考え、それを絵画や工作で表現し、さらに言葉で言えるという力も必要です。絵画工作クラスでは、4月に「宇宙人に会いました。宇宙人を描きましょう」という課題をやりました。アドバイスや導入によって面白い宇宙人が描けました。9月には「お母さんがびっくりするようなプレゼント、お母さんにあげたいもの」という課題をやりました。その時期になると、お母さんがどう考えるだろうという思考力と、制作する力がついてきていました。やはり幅広い生活体験を積み、自分で考えて、それを表現できるようになってほしいと思います。絵画に関しては、芯が強く、最後までがんばり、自分なりのこだわりがあり、楽しく制作するお子様が合格しました。
神田:絵画の試験では、制作中に先生から質問があります。その受け答えも採点対象かもしれません。
大野:言いたいことを、相手にわかるように言語化するのは、子どもには難しいですが、大事なことですね。それはメリーランドではどのクラスでも重視していることです。これが合格者数の増加につながったと考えます。

まずは経験させる

大野:これから早実を目指されるご家庭で留意していただきたいのは、お手伝いをさせて、家族の一員として意識づけることです。
神田:早実では、できることは自分でするという自立性が望まれています。ご家庭では、手取り足取り教えるのではなく、待つ姿勢で子どもにやらせてみることです。
大野:早実では、最初からひとりで登校することになります。公共の場でのマナー、困ったときには自分で訴える力を養わなければなりません。学校もその点を見ているようです。
細原:やるときはやる、楽しむときは楽しむというメリハリ。勉強についても、だらだらと勉強するのではなく、日々の生活習慣を見直していくのがよいでしょう。
神尾:失敗をどんどん経験させることです。これをしたら、こうなったということを経験することで、こうすればうまくいくという考えにつながります。どんどん失敗させて大きく育てた方がよいと思います。
河本:生活体験を大切に、好きなことを楽しんで、広く豊かな生活を送った方が、入学後も飛躍する子になるので、まずは生活を楽しんでがんばってほしいです。

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